CYLLENGEブログ
2025.12.17
―なぜ人はフィッシングメールを開いてしまうのか ―

どれだけ注意喚起をしても、フィッシングメールの被害は後を絶ちません。
セキュリティ教育を受けた社員でさえ、リンクをクリックしてしまうことがあります。
「なぜ人は、明らかに怪しいメールを開いてしまうのか?」
そこには認知心理の罠が潜んでいます。
目次
1. 権威バイアス
1.権威バイアス ~「公式」や「上司」からの指示は信じてしまう~
人は「権威ある存在」からの情報を疑いにくい傾向があります。
たとえば、「Microsoft」や「Amazon」「社内IT部門」など、信頼性のあるブランドを装ったメールが届くと無意識に信頼してしまいます。
この心理を突くことで、攻撃者は「ごく自然な行動」としてメール閲覧を誘導させたり、リンクをクリックさせるよう仕向けます。
差出人名やドメインを一見本物のように見せるだけで、多くの人は疑う前に行動してしまうのです。
2. 希少性と緊急性
2.希少性と緊急性 ~「今すぐ」「残りわずか」が理性を奪う~
スマートフォンはメールやSNSの利用頻度が高く、フィッシング詐欺の標的になりやすいデバイスです。
フィッシング詐欺とは銀行やECサイト、宅配業者などを装った偽のメールやSMSへ送信し、利用者を偽サイトへ誘導してログイン情報やクレジットカード番号などの個人情報を入力させる手口です。
特にスマートフォンでは画面が小さいため、URLやデザインの違和感に気付きにくく、本物だと思って操作してしまうケースが多発しています。
加えて、人間は危険や損失を感じると理性より感情が先に働く仕組みであることを攻撃者は利用し、「今すぐ」「緊急」「期限切れ」などの言葉で更に判断力を鈍らせてきます。
このため、特に多忙な時などにこのようなメールが届くと反射的にクリックしてしまうのです。
3. 一貫性バイアス
3. 一貫性バイアス ~「自分は大丈夫」という思い込みの罠~
セキュリティ意識が高い人ほど、「自分は引っかからない」と考えがちです。
この心理は「一貫性バイアス」と呼ばれ、人は自分の信念や行動を一貫して正しいと感じたい傾向があります。
たとえば、普段から「私は注意深いタイプ」と思っている人ほど、「これは安全なメールだろう」と早合点しやすいです。
つまり、「自信」が「確認不足」を生むのです。
フィッシング対策の難しさは、知識があっても心理的な盲点を突かれると脆いという点にあります。
4. 好意と親近感
4. 好意と親近感 ~「知っている人」からのメールに安心する~
ソーシャル・エンジニアリングでは、「好意」や「親近感」も重要な要素です。
SNSや会社のホームページから取得した情報をもとに、攻撃者は「仲間」や「知人」を装います。
例えば、「先日の会議で話した件について」や「〇〇プロジェクト関連で資料を共有します」など、こうした「文脈のリアリティ」があるメールほど、クリック率は高くなる傾向にあります。
AIによる自然言語生成の発達により、こうした「人間らしい偽装」はさらに巧妙になっています。
5. まとめ
人間の心理を利用した罠に対抗するには、単に「気をつけましょう」という教育では不十分です。
重要なのは、「確認行動を標準化する」ことです。
● 個人でできる行動
1. メールのリンクはクリックせず、公式サイトをブックマークから開く
2. 「今すぐ対応」は一呼吸おいてから確認する
3. メールの内容に不明な部分があったら一人で判断せず周りに報告・相談する
● 組織としての取り組み
1. 「誤報でも報告を歓迎する」安全な文化をつくる
2. フィッシングメールの模擬訓練を定期的に実施する
3. メールヘッダ・送信元確認の研修を行う
4. 疑わしいメールを自動で隔離・報告できる仕組みを整える
「人を責める」よりも「仕組みで守る」方向に舵を切ることが、持続的なセキュリティ意識の醸成につながります。
フィッシング詐欺は、技術的には古典的な攻撃ですが、
その本質は「人間の心理と習慣を突く社会的ハッキング」です。
私たちが守るべきものは、システムだけでなく「自分の認知の癖」でもあります。
「自分は大丈夫」と思った瞬間が、もっとも危険な瞬間。
冷静さを取り戻す仕組みをつくること。それこそが最も効果的な防御策です。
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